TENDRE POISON ~優しい毒~
「完璧だ」
神代は目をぱちぱちさせてる。
「数学は得意なの」あたしは髪を掻き揚げた。
「そっか……。それなら益々何で君が白紙で答案用紙を提出したのか不思議だよ。君なら満点とってもおかしくない問題だったのに」
あたしは参考書を机の上でトントンと鳴らした。
「それは先生の気を引きたいからだよ?」
あたしの言葉に神代は目をぱちぱち。
そしてすぐにはにかむような、どうしたらいいのか困ったような笑顔を見せた。
やがて出した答えは……
「大人をからかうんじゃない」
だった。
思ったよりつまんない男。
もっとうまく立ち回るかと思ったのに。
ひどく不器用で、真面目な性格が見え隠れしてる。
演技なの?それともそれが地なの?
どうしてあたしのことは乃亜のように扱わないの?
乃亜より子供だから?タイプじゃないから?
それとも警戒してる?
あたしはたくさんの謎を抱えることになった。