TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午後4時の憂鬱◆
◇◇◇◇◇◇◇◇
「鬼頭!帰るの?」
声がしてあたしは振り返った。
同じクラスの梶、こと梶田 優輝(Yuki Kajita)だった。
あたしが唯一クラスで親しくしてる男子。
「帰るよ」
「なら途中まで一緒に帰ろうぜ」
にぱっと人懐こい笑顔を浮かべると、梶はあたしの近くに顔を寄せた。
あたしは露骨に顔をしかめる。
「やだよ。一人で帰って」
「梶く~ん♪あたしたちと一緒に帰ろぉよ」
すぐ近くで同じクラスの女子たちの声が聞こえた。
梶は一見して感じの悪いヤンキーだけど、何故か女子から人気があった。
こんなやつのどこがいいんだか。
「呼んでるよ」
あたしの冷たい声にも、梶は堪えてないみたいで苦笑しながらも拝む仕草をする。
「傘ないんだ、いれてってよ」
「やだよ。めんどい」
しれっと言い、あたしは傘をさした。