TENDRE POISON ~優しい毒~
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あっという間に放課後になって、鬼頭が僕の準備室に顔を出す。
最近はこれがすっかり日課になっている。
いつもと変わらず、あまり無駄口を叩かずに黙々と作業をこなす。
今日の分を終えて、
「じゃ、行こうか」と僕は切り出した。
鬼頭はきょとんとして
「どこへ?」と言った。
僕は思わずがくりと肩を落とした。
「僕の家だよ。君が犬見たいって言っただろ?」
「ああ」
いつも思うけど、鬼頭には彼女しかない独特なリズムがある。
僕はそのリズムにまだ慣れないでいる。
梶田なら……
彼なら、そんな彼女のリズムを敏感に感じ取ることができるのだろうか。
鬼頭と梶田―――
お似合いだ……と思う反面、
それが酷くうらやましくも思う。