TENDRE POISON ~優しい毒~
「ゆず、ただいま~」
扉を開けると、小さなふわふわした生き物が神代に飛びついた。
神代が犬を抱き上げて、あたしに見せる。
「僕の飼い犬。ゆずって言うんだ」
“ゆず”と呼ばれた犬は茶色いふわふわの長い毛と、大きな黒い目が特徴的なチワワだった。
「かわいい!」
素直な感想だった。
今の今まで、あたしの方こそ犬なんて口実だったのに、神代の犬はすっごく可愛い。
「あたしも抱っこしてい?」
聞くと、神代は「いいよ」と笑顔で返してくれた。
「ほら、ゆず。雅お姉さんだよ~」
そう言って犬をあたしに犬を渡す。
雅って……
初めて名前呼んでくれた。
犬に対してだけど、あたしの心臓はドキドキとリズムを刻んだ。