TENDRE POISON ~優しい毒~
ざっと見たところ、何もめぼしいものはなかった。
寝室は……
きっと奥の扉だ。
神代が見てないことを見計らって、あたしはその扉に手をかけた。
『あたしも入る~』と言いたげに、ゆずが部屋の入り口をうろうろ。
「そこは寝室だからだーめ」
ふいに近くで声がして、あたしは飛び上がるほどびっくりした。
神代の気配をすぐ近くに感じる。
なんだろ、柔軟剤かな。石鹸のいい香りがする。
体温まで伝わってきそうなほど至近距離……
「まったく……油断も隙もない」
苦笑しながら、神代が言った。
「……ごめん」
「いや、ごめん。僕の方こそ説明してなかったね」
「……先生」
あたしはくるりと体を反転させると、神代に向き直った。
すぐ近くに神代の顔がある。
神代はミネラルウォーターのペットボトルを手にしていた。
「あたし、先生のこと好きだよ」