TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしはたっぷり時間をかけて着替えをした。
何より自分が冷静にならなくてはいけないと思ったから。
神代に貸してもらったTシャツは彼と同じ柔軟剤の香りがした。
あたしが着るとやっぱりぶかぶかで、ワンピースみたいになる。
何だか神代に包まれてるようで、変な気分だ。
リビングの扉を開けると、神代の姿はなかった。
あれ?
と思ったら、ソファに足を投げ出して横たわっている。
「先生?」
そっと呼びかけたが、返事は返ってこない。
神代のおなかの辺りでゆずがうずくまって眠りに入ってる。
神代も―――
目を閉じていた。
うそ……寝てる……?
あたしは神代の顔にそっと耳を近づけた。
神代の口から定期的な寝息が聞こえる。
寝顔は子供のようにあどけないものだった。
長い睫が頬に影を作ってる。
「きれいな寝顔……」
あたしはそっと神代の頬に手を伸ばした。