TENDRE POISON ~優しい毒~
「バカ!神代のバカ!」
あたしは歩きながら、さっきからずっと同じことを呟いてる。
道行く人々が、怪訝な顔して振り返ったけど、気にならなかった。
それほどまでに……
ムカついてた。
ムカついて、涙が出てくるぐらいだ。
涙……
あたし……なんで泣いてんだろ。
「ねえ、ねえねえ君~」
ふいに声を掛けられあたしは涙を拭い顔をあげた。
見知らぬ男二人が目の前にいた。
大学生ぐらいだろうか、二人ともいかにも、というチャラそうな男だ。
あたしは無視してすたすた歩き出した。
「あ、ちょっと待ってよ!君すっげーかわいいじゃん。ねえ、茶でもしない?」
一人の男が回り道してあたしの行く手を塞いだ。
もう一人はあたしの後ろ側にいる。
なんだ、ナンパか。
「悪いけど、急いでるの」
あたしはナンパ男を睨み上げた。