TENDRE POISON ~優しい毒~
「大丈夫か?」
思いのほか優しい声。
あたしはこくりと頷いた。
「…どうして、助けてくれたんですか?」
「目の前に同じ高校の生徒が絡まれてんのに、放っておいたから後味がわりーからな」
あ、そ。
こういうやつだよ、こいつは……
保健医はおもむろに着ていた革ジャンを脱いだ。
あたしが身を縮こませると、
「ほらよ。そんな格好だと風邪ひくぞ」
と言って、ふわりと革ジャンをあたしの肩にかけてくれた。
再びびっくり……
意外と優しいのかも。こいつ。
「あのぅ……先生はなんでこんなところに?」
あたしはおずおずと聞いた。
「俺は水月んちに行く予定だったんだ。そしたらお前がいたから。お前こそ何やってんだよ」
「あたしは……」
言いかけて、神代の家に行った事は黙っておこうと決め、口を噤んだ。
革ジャンの前を合わせて神代に借りたTシャツを隠した。
「あたしは、家がこの近くだから散歩してたの」
「ふぅん。じゃあ送ってってやるよ」