TENDRE POISON ~優しい毒~
「いえ、大丈夫です」
あたしはかぶりを振った。
「ばぁか、あの連中がまだこの辺うろうろしてるかもしれないんだぞ」
そう言ってあたしの額をでこピンで弾く。
「それは……困る……」
「だろ?だったら大人しく送られておけ」
「じゃあ、お願いします」
あたしは保健医に送られることになった。
成り行きとは言え、不覚……
でもこの保健医が現れなかったら……
あたしは身震いした。
保健医は車で来たわけじゃなかったみたい。
なんとなく二人肩を並べて歩く。
日が暮れた空はすっかり暗く、所々に街灯がぽつんぽつんとあるだけだ。
別にこいつと話す事もない。向こうも同じだったのか、気詰まりな沈黙が流れてた。
早く家に着かないかな?
家に着くって行ってもすぐ近くまでだけど。
だってあたしの家は楠家の隣だから。
こいつから、神代に洩れたら大変。