TENDRE POISON ~優しい毒~
「僕が水をこぼしちゃったから、着替えてももらった。それだけだよ」
「そうか」
まこは短く返事を返して、それ以上は深く突っ込んでこず、再びビールに口をつける。
「食わないの?パティスリーメゾンのケーキ。お前ここの店のケーキ好きだったろ?」
そう言ったまこはいつも通りのまこで、別段僕が彼女を家にあげたことを怒ってる風でもなかった。
僕はまこの隣に腰を降ろし、ケーキの箱を開けた。
箱にはいちごのショートケーキに、ガトーショコラ、ニューヨークチーズケーキが入っている。
僕が好きな種類のケーキばかりだ。
何にしようか迷ってると、にゅっと手が伸びてきてガトーショコラが手で掴まれた。
まこは手づかみでガトーショコラを口元に運ぶと豪快に口をあけてがぶりと一口いった。
「お前、明日のこと覚えてるだろうな?」
ガトーショコラを食べながら、まこが言った。
手についたチョコを舐め取る仕草にどきりとしてしまう。
僕は慌てて目を逸らした。
そして別のことを考える。
なんだ。そのことを確認しにわざわざ来たのか。
「覚えてるよ。合コンのことでしょ」