TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしは濡れた髪をちょっと掻き揚げた。
「あいつは色仕掛けじゃ落ちないよ」
あたしの言葉に明良兄はちょっとまばたきした。
目がどうして?と語っている。
「だって学内で一番きれいな三年の先輩が神代に迫ったらしいけど、だめだったっていう噂だもん」
「へぇ。そんな話聞いたことねぇや。じゃ、これから先どうするんだ?」
明良兄の問いにあたしはのんびり答えた。
「気長にやるわよ。ま、少しずつ仕掛けはしていくつもりだけど」
口の端でにっと笑う。
明良兄はちょっと息を呑んで口をつぐんだ。
実際、仕掛けはした。
これで神代が乗ってくるか……