TENDRE POISON ~優しい毒~
―――
何時間歌っただろう。
もう夜の9時だ。
「~♪」
梶が歌い終わって、あたしはタンバリンを鳴らした。
「梶、歌うまいね」
「サンキュ~、鬼頭もうまいよ」
梶は照れ笑いを浮かべたまま、あたしの隣に腰を下ろした。
?さっきまで向かい側に座ってたのに……
梶はコーラの入ったグラスを引き寄せて、ストローに口をつけた。
「あ、あのさ……」
「なに?」
次何歌おうかな。あたしは歌本を広げながら聞いた。
そう言えば、口約束とは言え神代ともカラオケいく約束してたんだった……
神代が好きなあゆの歌を今日は一曲も入れてない。
何でだろ……
「……鬼頭って付き合ってる奴とかいるの?」
梶の問いにあたしは歌本から目をあげて梶を見た。
梶の横顔は薄暗い室内でもわかるほど真っ赤だった。
なんでそんな顔してそんなこと聞くんだろ。
「いないよ」
あたしはそっけなく答えた。
「じゃ、好きな奴は?」