TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前5時の後悔◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
僕がロビーに戻ると、エマさんが心配そうに僕を覗き込できた。
「生徒さん大丈夫だった?」
「……うん。もう帰るって」
僕が沈んだ顔してたからかな、まこが
「担任でもないんだし、いい加減あいつの心配するのもやめろよ」
と言った。ちょっと呆れてる。
「部屋空いたよ~」とアミさんの声で僕たちはそろって顔を上げた。
部屋に入っても、相変わらずまこは千夏さんにべったりだ。
いちゃいちゃしてるようには見えないけど、仕草や言葉遣いがいつものまこより数倍優しい。
こんな表情をするんだ。こんな仕草をするんだ。
まこの新しい一面をいくつも発見した。
「神代先生、ほらどんどん入れちゃって。僕らは入れたから~」と和田先生。
僕の隣ではエマさんがドリンクのメニューを開いていた。
歌う気にもなれず、僕は何となくエマさんのメニュー表を見つめた。
「あ、何か飲む?」
エマさんが目だけをあげて控えめに聞いてくる。
「うん。じゃぁジントニックを。エマさんは」
「あたしも同じのを」と言って微笑んだ。
最初は鬼頭と似てると思ったけど、それほどでもないな。
鬼頭には……
目力がある。
大きな目でまっすぐにこちらを見つめてくる。決して逸らさない、力強い独特の視線。
鬼頭……
もう帰ったかな?