TENDRE POISON ~優しい毒~
僕が顔を上げると、廊下の端にエマさんが立ってるのが見えた。
ひどく心配そうだ。
彼女の顔を見て僕は我にかえった。
僕は……
何を言おうとした?
「エマちゃん、どうした?」
まこが優しく問いかける。
「あたしは……ちょっと水月くんが心配だったから……具合悪いの?お酒に酔った?」
「だいじょう…」と言いかけたところで、まこの声が被さった。
「こいつ酔ったみたいでさ。帰らせるわ。エマちゃん一緒についててやってくれない?」
「え?……うん。もちろん!」
エマさんは勢い込んだ。
「ちょっ。まこ!」
「俺らは残りのメンバーで楽しくやってるから、気を使うなよ。それより水月、エマちゃんをちゃんと送り届けろよ」
まこがそっと耳打ちしてくる。
まこは強引だ。
僕たちをくっつけようとしているのが、まじまじとわかる。
でも……これ以上まこと千夏さんが二人でいるのを見たくなかったら、ちょうど良かったのかもしれない。