TENDRE POISON ~優しい毒~
「起きてたの?」
背後から声がして、僕は振り返った。
僕の白いシャツだけを着たエマさんが立っていた。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
僕がタバコを灰皿で消すと、エマさんが顔を赤くして僕の隣に座った。
ゆずが警戒したようにさっと飛び上がり、ソファの下にもぐる。
どうやらゆずはエマさんのことがまだ恐い様だ。
鬼頭にはあんなに懐いていたのに。
「あの……あたし、こんなこと初めてで。その……会ってすぐってのは」
エマさんはいいにくそうに口の中でもごもごと呟いた。
「うん……」僕はエマさんの言葉に頷いた。
見ていれば分かる。そんな軽い女の人じゃないことぐらい。
「ねえ……このまま今日でさよならなの?」
消え入りそうな声でエマさんが呟いた。俯いているから表情が良く分からいけれど、口調は暗かった。
「……」
僕は答えられずにいた。