TENDRE POISON ~優しい毒~


「うぃ~っす」


そんなこと考えてたら、教室の入り口付近で梶の声が聞こえた。


あたしの肩がびくりと震えた。


そろりと顔を向けると、露骨に梶と目が合っちゃった。




梶は自分の机に鞄を乱暴に放り投げると、


「うっす!」と手を挙げてにっと白い歯をのぞかせて笑った。


「…お…はよ」


あたしが曖昧に返事を返したら梶は照れくさそうに顔を赤くして俯いた。


「……あのさっ、昨日の……」


「あ……、昨日のね。あたし…」


「や!返事は焦らんないからさっ!ゆっくり考えてよ」梶が手を上げて制した。


「……うん」




梶が行ってしまってから、まだあたしの周りにいた斉藤さんたちがわっと集まってきた。


「昨日って、何があったの!?」


「何も……」


「何もないってことないでしょ!返事ってどういう意味!?」




うざい。


だったら何なの。




あたしは鞄を乱暴に机に置いて斉藤さんたちを睨んだ。






「関係ないでしょ?」



思わず口についていた。






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