TENDRE POISON ~優しい毒~
「(x+4)(x2−4x+16)です」
あたしがスラスラ答えると、方々で
「おぉ」と声があがった。梶も目を丸めてこっちを見てる。
「君は真面目なのか不真面目なのかよく分からないね」
神代はふぅと小さくため息をつく。
なんだろう。何だかすごく疲れてる。
無理もないか。昨日あんな場面見られたんだから。ホントならあたしの顔を見たくないじゃない?
だけど……
神代は教科書でポンとあたしの頭を軽く叩くと、
「鬼頭は昼休み準備室」
と短く言った。
ちょっとびっくりした。
周りからひそひそと話し声が漏れる。
何だろう、嫌な感じ。あたしは顔を歪めた。
でも、別に誰に何言われても平気。
あたしは平然とした態度で教科書のページをめくった。
―――昼休み
お弁当を持って席を立ったあたしを梶が呼び止めた。
「おい!神代のところに行くのかよ」
「そうだけど?」
あたしはいぶかしげに梶を見上げた。
「お前、噂になってんぞ。鬼頭と神代がデキてるって」
「あたしと神代が?ないないっ」
あたしはちょっと笑って手を振ったけれど梶は真剣だ。強い力であたしの腕を掴む。
教室中のクラスメイトがあたしを見てひそひそ話してる。
ふぅん。噂になってるってことはホントなんだ。
それはそれで好都合だけどね。