TENDRE POISON ~優しい毒~
でも……
「単なる噂でしょ?あたしとあいつとは何もないって」
今はまだその時期じゃない。
あたしは再度否定した。
この否定もどこまで通じるやら……
梶はぎゅっと眉を寄せて、あたしの腕から手を離した。
「……じゃぁ俺も行く」
「へ?」
「俺も行ったっていいだろ?準備室」
あたしは目を細めた。
心配なのは分かる。確かめたい気持ちも分かる。でも、ここは一人でいかないと話せる話もできないじゃん。
あたしが俯いて親指の爪を噛んだ。
「わ、悪かった…疑ったりして」
急に梶の声が和らいだ。
え?
あたしが顔を上げる。
「ごめん、お前のこと俺疑ってた。お前は俺に嘘つかないのに」
「別に、いいよ。疑われるような行動してるあたしが悪いんだし」
それだけ言うとあたしは梶に背を向けた。
ごめん梶。今はまだ事情を話せないの。
いつか……全部片付いたら全てを話すから。
それまで待ってて。
梶が、あたしの背中をいつまでもじっと見つめていたのがわかったけど、あたしは気付かない振りをした。