TENDRE POISON ~優しい毒~
「分かったよ。先生があの保健医を好きな気持ちは理解できた。それを言う為わざわざ呼び出したっていうの?」
あたしの言葉に神代はちょっと瞬きをして、すぐに顔を伏せた。
「……うん、ごめん」
「別に。……あたし、気持ち悪いとか思わないから、がんばってね」
ホントにがんばって。
あんたが頑張れば頑張るほど、あんたは泥沼にはまっていく。
あたしがはめるんだから。
そう心の中で言ってお弁当の蓋を開ける。
今日は昨日の残りのから揚げと卵焼き、ひじきの煮つけと枝豆だった。
神代はどこかしらほっとしたように胸を撫で下ろすと、
「おいしそうだね」とあたしのお弁当を覗き込んだ。
「自分で作ってくるの?」
「他に誰もいないからね」そっけなくあたしは卵焼きを口に入れた。
塩入れすぎたかな?ちょっと辛い。
そんなことを考えてると、神代の視線を感じてあたしは手を止めた。
「なに?欲しいの?」
「いや!」神代が慌てて手を振る。
「先生は毎日学食?この前ラーメン食べてるの見た」
保健医と肩を並べて食べてたっけ。
そのときは単なる仲良しだと思ってたけど。
「僕はほとんど学食。料理苦手だから」神代は苦笑い。
「今日は?コーヒーだけ?」
「うん。二日酔いで食欲ないんだ」
神代は少し辛そうに俯いた。
なんだ……
顔色の悪さは二日酔いのせいだったんだ。
あたしは我知らずほっと胸を撫で下ろしていた。