TENDRE POISON ~優しい毒~
「信じてよ」僕は、まこの目をじっと見つめた。
「信じるよ。お似合いだと思ったんだけどなぁ。お前とエマちゃん」
まこはあっさり引き下がった。こっちが拍子抜けするぐらい。
頭の後ろで手を組んで、のんびりタバコを吹かしている。
そのことでまこに相談したかったこともある。
実のところ、エマさんには「付き合って欲しい」と言われていたのだ。
―――今日家を出るとき、
ドアに鍵をかけていると、エマさんがもじもじと俯いて、
「や、やっぱりこ…このままあたしたちって終わりなの?」と聞かれた。
「え?」
「……水月くんはさっき答えてくれなかったけど、あたしはいやだな。水月くんに重いって思われるのいやだけど、ホントは最初に見たときから一目ぼれだったの。
一晩だけならいいや!ってあたしもノリでそんなことしちゃったけど、やっぱりこのまま終わるなんていや…」
最後の方は掠れるような小さなしぼんだ声だった。
「会ったその日に寝ちゃう女ってやっぱり軽いかな?」
エマさんが顔を真っ赤にして僕を見上げた。
「い、いや。僕の方こそ軽率なことしたって思ってるよ」
そして僕はずるい。
エマさんが何を望んでいるのか分かってるのに、彼女の望みを叶えて上げられない。
「また連絡するよ」
曖昧な言葉でごまかして。
僕は最低だ。