TENDRE POISON ~優しい毒~
「先生…」
近づくと鬼頭の姿は形を変え、楠 乃亜の姿に変わった。
「く、楠!」
楠は笑っていた。鬼頭の笑顔によく似ている綺麗な笑顔。
だけど、
「ウラギリモノ」
楠は眉間に皺を寄せるとそう言って唇を歪めた。
「くすの……」
一歩近づくと、楠の姿が真っ赤に染まった。
それは見覚えのある……
血の色だった。
「楠―――!!」
自分の声で僕は目覚めた。
はっとなって慌てて辺りを見渡すと、そこは見慣れたはずのリビングだった。
ゆずがきゃんきゃん吠えてる。
僕はゆずを抱き上げると、
「ごめんね、びっくりしたね」と頭を撫でてなだめた。
そうだ、昨日はソファで眠ってしまったんだ。
ソファで眠るつもりなんてなかったけど、何となく寝室のベッドで寝る気になれなかったんだ。
だからあんな悪夢を……?