TENDRE POISON ~優しい毒~

◆午前8時の思惑◆




◇◇◇◇◇◇◇◇



学校に来ると、教室が騒がしかった。


あたしが教室の扉を開けるとみんながあたしを注目する。


なに―――?


嫌な雰囲気が流れてる。



「鬼頭!」沈黙を破るように最初に声を掛けてきたのは梶だった。


あたしの後ろで勢い良く扉を開ける音がして、振り返ったらまさに鬼の形相とも言えるべく顔色を変えた明良兄が立っていた。


「ねぇ、あれって楠先輩じゃない?」


「キャ~かっこいい♪」


「楠先輩だ。恐えぇ」


なんて方々からひそひそ話が聞こえる。






明良兄、学校では他人同士だって言ったのに。


何でここに来たのよ。


心の中で怒って顔をしかめていたけど、そんなのは今の明良兄に通じないみたい。


形の良い眉を吊り上げて、目の色が険悪な光を帯びている。


「ちょっと来い」


怒ったままあたしの腕を乱暴に引っ張ると、明良兄はくるりとあたしに背を向けた。


「鬼頭!」梶が何か言いたそうにあたしと明良兄を見ていたけど、明良兄が一睨みしたら硬直したように気をつけの姿勢をした。





明良兄はあたしの手を引いてどんどん人けのない廊下へと進んでいく。


「明良兄ちょっと、どこ行くの?」


あたしは小声で聞いたけど、明良兄は何も答えてくれない。




明良兄―――


なんで怒ってるの?







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