TENDRE POISON ~優しい毒~



「今のところ誰もこの前を通ってない。雅、急げよ」


パソコン室の扉に張り付いて、明良兄が廊下の様子を窺っている。


「分かってる」


急かされたつもりはないけど、後ろ暗いことをしているからかな?


あたしのキーを叩く指はほんの少し震えていた。



カタカタカタ……


しんと静まり返った教室にキーボードを叩く音だけが響く。


時間はそれほどかからなかった。


最後にEnterキーをパチンと押して、仕上がりだ。



あの写真をHPに掲載した新聞部にはたっぷりと仕返しをお見舞いしてやらなきゃ。


あたしの計画を邪魔して!!


ムカついたからサーバーにウィルス送り込んで、データを全部処分してやった。


それこそ今まで溜めていたものも、これから掲載する予定のものも全部、ね。






あたしを鬼だという人間はきっとごまんといるだろう。


鬼でも悪魔でも何でも言うがいい。




何と言われようと、邪魔するヤツは容赦しない。

















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