TENDRE POISON ~優しい毒~
「君たちのことはホームページで拝見したよ」
重苦しい空気の中、校長先生が切り出した。
「一教師が特定の生徒と親密になるのはねぇ」
神代は頭を下げた。
「は。申し訳……」
「神代先生は関係ないんです。あたしが勝手にやったことだし」
神代の言葉にかぶせてあたしが言った。
校長先生は興味深そうに目を細めた。
「ほう。では君が神代くんに熱をあげてるって言うわけかね?」
熱をあげてる、って今時言わねぇよ。心の中で思わず悪態をついてしまった。
「本気で先生のことを好きとか、そんなのじゃないんです。確かに、神代先生は尊敬できる先生でもありますが、あれは一種のコミュニケーションでして、深い意味はありません」
あたしは胸をはって堂々と言い切った。
下手な言い訳は通じない。正々堂々としてるのが一番だ。
神代は目を開いてあたしをちょっと見た。
校長先生は目をぱちぱちさせながら、あたしと神代を見比べてる。
「まぁ神代先生は人気がありますからねぇ」
そう楽しそうに言って口ひげに手を伸ばす。ちょっと整えると、
「今回の件は大げさに取り上げた新聞部にも問題があるでしょう。鬼頭さんも学年首位ですし、ま、今回はいいです」
とあっさりとあたしたちに背を向けた。
「ただし、これ以上のことがありましたら、私としても考えなければなりません。そのことをよぉく頭に入れておくように」