TENDRE POISON ~優しい毒~
「…あたし、どうしたんですか?」
布団を顔まで引き上げて、あたしは恐る恐る聞いた。
「どうしたって、また倒れたんだよ。お前、よく倒れるな。大丈夫か?」
保健医の手がにゅっと伸びてきて、あたしの額にそっと触れた。
なに?
こいつ、いつになく優しい……。
気持ち悪いんですけど。
でもこれはチャンスかもしれない。保健医に近づく。
「昔から貧血持ちなんです。考え事してたり頭使ったりすると急に倒れることがあって」
あたしは保健医の手から逃れるように体をずらすと何とか答えた。
「貧血―――か。貧血を甘く見るなよ。貧血も立派な病気だ」
保健医は真面目くさった顔であたしを覗き込んだ。
なんか調子狂う。
今日は何でそんなに普通なの?
もっと、何か言われるかと思ってたから尚更だ。
あたしがいぶかしんで、保健医の目の奥を覗き込もうとしていると、
「なんだよ?」と不機嫌な声が返ってきた。
保健医は無断でベッドの端に腰を下ろすと、
「俺、お前のこと見くびってたかも」と言い銀縁のメガネをちょっと直した。
すうっと息を吸うと、至極真剣な顔で、
「お前、何者だ?」
と聞いてきた。