TENDRE POISON ~優しい毒~
「神代先生じゃなければ、あたしって考えは分かります。でも、普通に考えたらありえない話じゃないですか?
女子高生がウィルスを送り込むなんて」
あたしがちょっと口の端を曲げて笑った。
すると保健医も同じように皮肉そうに笑った。
「普通に考えたらな。でもお前は何か普通そうじゃなかったから」
とよく分からない理由の返答が返ってきた。
でもここでひるんだらあたしの負けだ。
ここまで来て負けるわけにはいかないんだよ。
深呼吸して息を整えると、あたしはちょっと笑った。
「先生って思ったより頭がいいですね。勘がいいって言うのかな。でもそう言う男の人嫌いじゃないですよ?」
あたしの言葉に保健医は涼しくふっと笑った。
見る角度によっては不適ともとれる笑みだった。
「俺も、お前みたいな女嫌いじゃないよ」
あたしは目を開いた。
何だかなぁ。
この男―――難しい。
「なあ、一つ聞いていいか?」保健医はことさらゆっくりと切り出した。
あたしも同じぐらいゆっくりと頷いた。
「ウィルス送り込んだのは、水月の為?それとも自分の為?」
保健医の質問に少し悩んだものの、あたしの答えは早かった。
「そんなの自分の為に決まってるじゃないですか」
こいつに何言っても無駄だ。偽りなく自分の感情で話すのが一番と踏んだ。
保健医は喉の奥でくっくっと小さく笑った。
「おもしれー女」
あたしは鼻白んだ。
こいつ……難しい。