TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前9時の事故◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
校長室を出た直後に、突然鬼頭は倒れた。
びっくりした。前触れもなく、ふっと糸が切れたように突如意識を失ったんだ。
まるで糸がプツリと切れたマリオネットのように、その場で崩れた。
すぐに他の先生と保健室に運んだけど、大丈夫かな?
幾分か顔色が悪かったし心配だ。
そういう事情があったから、二時限目は散々だった。
簡単なはずの公式を言い間違えるし、生徒の名前を呼び間違えるし……
生徒たちは表向きは何事もなかったようにしているけど、時折
「ねぇ、あの噂ってホントかなぁ?」
「あんなの合成写真じゃん」
とか噂が飛び交ってた。
二時限目が終わると、僕は逃げるように保健室に向かった。
まこには「あれほど気をつけろって言っただろ!」とお小言を言われそうだったが、今はそんなこと気にしていられない。
何より鬼頭の様子が心配だ。
保健室の扉をノックすると、
「うぃーっす、開いてるよ~」と、まこののんびりした返事が返ってきた。
おずおずと僕が保健室の扉を開けると、
机に向かって何やら書いていたまこが振り向いて、手をあげた。
「よ」
僕も手を軽く手をあげる。
「まこ…鬼頭の様子は?」
まこは難しい顔を作った。