TENDRE POISON ~優しい毒~

◆午前9時の事故◆



◆◆◆◆◆◆◆◆


校長室を出た直後に、突然鬼頭は倒れた。


びっくりした。前触れもなく、ふっと糸が切れたように突如意識を失ったんだ。


まるで糸がプツリと切れたマリオネットのように、その場で崩れた。


すぐに他の先生と保健室に運んだけど、大丈夫かな?


幾分か顔色が悪かったし心配だ。


そういう事情があったから、二時限目は散々だった。


簡単なはずの公式を言い間違えるし、生徒の名前を呼び間違えるし……


生徒たちは表向きは何事もなかったようにしているけど、時折


「ねぇ、あの噂ってホントかなぁ?」


「あんなの合成写真じゃん」


とか噂が飛び交ってた。





二時限目が終わると、僕は逃げるように保健室に向かった。


まこには「あれほど気をつけろって言っただろ!」とお小言を言われそうだったが、今はそんなこと気にしていられない。


何より鬼頭の様子が心配だ。




保健室の扉をノックすると、


「うぃーっす、開いてるよ~」と、まこののんびりした返事が返ってきた。


おずおずと僕が保健室の扉を開けると、


机に向かって何やら書いていたまこが振り向いて、手をあげた。


「よ」


僕も手を軽く手をあげる。



「まこ…鬼頭の様子は?」



まこは難しい顔を作った。




< 196 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop