TENDRE POISON ~優しい毒~
「そんなに悪いの?」
僕が顔色を変えると、
「いんや、起きて一人で帰ってった。んな心配するな。ありゃただの貧血だ」
と笑った。
貧血……
僕がほっと胸を撫で下ろす。そう言えば前も貧血で倒れたっけ。
「そんなに心配か?あいつのことが」
その物言いは怒ってる風でもなく、呆れている様子でもなかった。つるりと無表情だ。
「そりゃ心配だよ。僕の目の前で倒れたわけだし……僕の可愛い生徒だし」
「可愛いねぇ」
含みのある言い方をしてまこは皮肉そうに唇の端を吊り上げた。
「な、なんだよ。別に普通でしょ?」
まこは軽く肩をすくめてみせた。
「そう思うのは普通だが、あいつは普通の女子高生とはちょっとばかりわけが違うぜ」
想像と反してまこはどこかしら楽しそうだ。
―――何だか嫌な予感がする。