TENDRE POISON ~優しい毒~



女生徒の悲鳴が聞こえて僕は足を止めた。


声は鬼頭のものではなかった。


そのことに少しだけほっとする。




ほっとしたのもつかの間、


「待てよ!」と女生徒の怒鳴り声が聞こえてきた。


それとほぼ同時に鬼頭が階段の踊り場に現れる。ほとんど転がるように足をもつれさせて。


「鬼頭―――」


鬼頭は階下にいる僕の顔を見ると目を開いた。だがその奥から勢いをつけた腕が伸びてきた。



腕は鬼頭の両肩を掴むと、彼女を階上に引き上げようとした。


「触んな!」鬼頭が腕を振り払おうとするが、何人かの腕を引き離すことはできなかった。





「鬼頭!」そう叫んだと同時だった。





ガシャン―――!!





と派手な音がして僕は目を開いた。



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