TENDRE POISON ~優しい毒~
「……おい!どうしたんだ!?」
タイミングよく階下に梶田が現れた。
走り回っていたのか息を切らしている。
「梶田!ちょうど良かった。まこを……保健室の先生を呼べ!ついでに救急車だ!」
僕の腕の中で血を流してぐったりしている鬼頭を見て梶田は顔を青くしていた。
「お、おい。何があったんだよ……」
梶田は弱々しく呟いて、階上へあがって来ようとしたが、
「いいから!今すぐ呼んで来い!!」
それを制して僕は怒鳴った。今の僕のどこにこんな大声をあげる力があったのか不思議だったが、鬼頭を助け出したい一心だったに違いない。
梶田は弾かれたように飛び上がり、慌てて階段を下っていった。
「しっかりしろ、鬼頭。今先生が来るから」
僕の腕の中でぐったりと体を預け、目を閉じていた鬼頭は小さく頷いた。
よく見ると、鬼頭の短いスカートからも赤い血が流れて白い太ももを赤く染め上げていた。
「せんせ……」
僕の腕の中で鬼頭は消え入りそうな声を搾り出した。
血で染まった震える手をゆっくりと上げる。
「鬼頭、じっとしてろ」
震えながら、ゆっくりと小指を立てる。
「……小指を…」