TENDRE POISON ~優しい毒~
でも先に手を出してきたのは先輩ですよ?
だからこれは正当防衛ってことで。
あたしは手を振り上げた。
パシンッ!
気持ちがいいぐらいその音は響いた。
「った!何すんだよ!!」
先輩が目を吊り上げてあたしを睨んだ。頬を押さえている。
「てめ!何すんだよ!」周りの先輩たちも目くじらを立てて怒鳴り散らした。
「何って正当防衛」あたしは口の端を曲げてちょっと笑った。
「てめぇ!!」周りの女子たちがわっとあたしを掴みかかった。
先輩方のこんな姿神代が見たら引くだろうなぁ。
神代じゃなくても引くか。
でも、あたしだってやられっぱなしじゃいられない。
小さい頃は空手だってやってた。腕には自信がある。
喧嘩は好きじゃないけど、正当防衛だもん。仕方ないよね。
多勢に無勢。卑怯なやり方だ。でも負けていられない。
そんなわけでつかみ合いの喧嘩をしていたら、神代が現れた。
「鬼頭―――」
神代は大きな目を見開いてあたしをじっと見つめていた。