TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしは振り返った。
神代は手にビニール傘を持っている。
走ってあたしの下に来ると、
「これ。持っていきなさい」と傘をずいと差し出した。
「え?いいよ、そんなの」
「いいって、どうやって帰るの?傘持ってきてないでしょう?」
あたしが何て答えようか考えてると、
「持っていきなさい。女の子は体を冷やしちゃいけない」
とにっこり微笑んだ。
あ……今。笑った……
ちょっと……可愛いかも。しかも、あたしなんかの為にわざわざ走ってきて。
優しいのかな?
いやいや、相手は神代だよ。
あたしは乃亜のようにはならない。
あたしは神代のことを好きになんてならない。