TENDRE POISON ~優しい毒~
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手のひらに温かいぬくもりを感じる。
大きな手があたしの手を握ってる。
優しい感触。
あたしはゆっくりと目を開けた。
白い天井が視界に飛び込む。
でもちらりと視界の端に映った窓の外はとっぷりと夜の闇が押し寄せていた。
今、何時ごろなんだろう……
「……ここは?」
「よ。目が覚めたか。ここは病院だ」
すぐ近くに保健医の姿があった。
げ!っていうことは手を握ってるのは保健医?
あたしはそろりと手元を見やると、手を握っていたのは神代だった。
神代はベッドの脇の椅子に座ってベッドに顔を伏せて眠りこけている。
いつか見た、優しい寝顔……
子供のようなあどけない寝顔。
「水月はお前からずっと離れなかったんだ」
保健医はやれやれと言った感じで肩をすくめた。
「あたし……」
何とか起き出そうと上体をずらすと、鋭い痛みが肩や腕に走った。
「っつー!」
「無理するな。肩を5針、腕を5針、腰を3針も縫ったんだ。けど残らないらしいぜ。良かったな」
そう言って保健医はあたしの頭をそっと撫でた。