TENDRE POISON ~優しい毒~
「「は!?」」
あたしと保健医の声がきれいに重なった。
開いた口が塞がらないないあたしは口をぱくぱくさせるだけだった。
「おまっ!何言い出すんだよ!仮にも教師と生徒だぜ」
一足早く口を開いたのは保健医だった。
「分かってるよ。でも、鬼頭を怪我させたのは僕のせいだから、償いというか色々大変だろうから面倒見てやりたいんだ」
「だからって自分の家に来させるなよ。面倒見るのもいいが、過剰すぎるとまた問題が起こる」
保健医は眉を吊り上げて怒鳴った。
あのぅ。ここ一応病院なんですけど。
「さっき鬼頭のご両親に連絡したら、まだあちらから帰って来れそうにないらしいんだ。本当は僕が鬼頭の家に行くほうが良かったけれど、一人暮らしの娘さんのところに行くのはちょっと常識的にどうかな?って思ったんだ」
そりゃそうだ。
それにうちに来られても困る。隣には楠家があるから。
「それに僕の家にはゆずもいるし、だからうちに来ないか?一人だと何かと大変だから」
神代は冗談で言ってるようには見えなかった。
色素の薄い両目は真剣そのものだった。
神代のマンションに、あたしが?
少し計算違いがあったものの、
これって願ってもないチャンスじゃない?