TENDRE POISON ~優しい毒~
◆午前11時のキス◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
鬼頭の家の近くのコンビニで僕は車を止めて、彼女の帰りをまこと待っていた。
まこは車の窓を開け放ち、タバコを吸っている。
「なぁ、さっきの……」
煙を吐き出しながら、まこは呟いた。
僕はまこの横顔に目を向ける。
「今度問題になったら、教師やめる覚悟だって本気か?」
僕はまこの横顔から視線を逸らすと前を向いた。
「うん」
「何でお前……教師は夢だったんだろ?」
少し苛立ったようにまこが小声で言った。
「夢……だったよ。でも、彼女をあんな目に合わせたのは僕のせいだ。彼女を護るためには夢だって捨てたってかまわない」
まこはせっかちにタバコを2、3口吸うと乱暴に灰皿に吸殻を押し付けた。
「彼女ってのは、鬼頭のこと?それとも楠のことか?」
まこの質問に僕の心臓がぎくりと縮み上がった。