TENDRE POISON ~優しい毒~
「先生はどうするの?」あたしは聞いた。
まだ傘は受け取ってない。
「車だから大丈夫。いつ降られてもいいように、その傘は常に車の中に入れてあるんだ。気にせず使って?」
「そう……じゃぁ大丈夫ですね」
あたしは神代の手から傘を受け取った。
「何?僕のこと心配してくれるんだね。優しいね、君は」
え―――?
いや、それは当然でしょ。
でも……
心がちょっと軽くなる。
重いものばかり背負ってきがしてたから、今ちょっと楽になったかも。
「ありがと」
あたしは笑った。
初めて神代に見せる笑顔だった。