TENDRE POISON ~優しい毒~
「あぶなっ」
鬼頭の声が聞こえて、ドサリと僕はベッドに倒れこんだ。
タンドゥルプアゾンを間近に感じる。
「った~、ちょっと先生!大丈夫?」
すぐ近くに鬼頭の顔があって驚いた。
鬼頭の体は僕の下敷きになっているようだ。怪我をしていない方の腕で肩や腕を庇っている。
「ごめっ……!」
すぐに体を退けようとしたけれど、アルコールの回った体が言うことを聞かない。
「別に……いいよ」いつものそっけない口調で答えが返ってくる。
そっけないが別段気を悪くしたようでもなさそうだ。
それどころか鬼頭の腕が僕の背中に回ってきた。
「鬼頭!?」
驚きに声が引っくり返った。
「ホントだ。細マッチョ。引き締まった体してるね」
鬼頭は控えめだけどしっかりした手付きで僕を抱きしめた。
鬼頭の体温を感じる。
タンドゥルプアゾンをより間近で感じる。
この香りが、僕を捕らえて離さないように、彼女の腕がしっかりと絡みついている。
ドクン、ドクンを僕の心臓が派手に音を立てる。
「先生……あたしが怪我したのは先生のせいじゃないよ。
だから自分を責めないで」