TENDRE POISON ~優しい毒~
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一緒にベッドを使おうと、鬼頭は言ってきたがそれは頑なに受け入れなかった。
「それはできない」
「何で、教え子だから?」
頭の良い子だと思うが、時々常識はずれなことを聞いてくる。
それが天然なのか計算なのか僕には全く分からなかったけど。
僕はソファで眠ると伝えると、鬼頭は僕の心配をしてくれた。
「あんな狭いところで寝たら、体痛くなるよ」
前言撤回。天然でも計算でもない。鬼頭は―――優しい子だ。
それでも、僕は鬼頭の申し出を断り、鬼頭もそれ以上は何も言ってこなかった。
大人しくベッドに入ると、布団をかぶった。それを見届けると僕は寝室の扉をきっちり閉めた。
何時間たっただろう。あれから食べた後の片付けをしてシャワーを浴び終え、本日二回目の晩酌をしている最中だった。
真夜中のことだった。
僕がゆずとソファでうたた寝をしていると、鬼頭の苦しげな呻くような声が聞こえてきた。
最初に異変に気づいたのは、ゆずだった。
寝室の前でキャンキャン吠えると、くるくると回っている。
僕はゆずを抱き上げると、一瞬躊躇したものの容態が心配になった僕はそっと寝室の扉を開けた。
怪我をした方の腕を上側に、鬼頭は横向きで眠っていた。布団から腕を出して枕を抱えている。
「……っつ……ん」
目はぎゅっと閉じられ、苦しそうな声を出して眉を寄せていた。
「鬼頭!大丈夫か?」
僕は彼女の体を軽くゆすった。