TENDRE POISON ~優しい毒~
「夜中に痛み止めが切れると思う。切れたら、薬を飲ませろ」
まこがそう言って、痛み止めの内服薬を置いていった。
「鬼頭、痛むのか?薬……薬飲もう」
僕は慌ててキッチンに向かうと、まこから預かった薬の紙袋とミネラルウォーターのペットボトルを手に取り慌てて寝室に戻った。
鬼頭は寝ているのか起きているのか分からなかったけれど、布団にくるまり肩を押さえてる。
「鬼頭、薬だ。飲みなさい」
僕は錠剤をパッケージから取り出すと、手のひらに乗せて鬼頭の顔の辺りに持っていった。
「うー」と小さくうなり声をあげて、鬼頭は布団を引き上げる。
僕の声が聞こえてるのかどうか分からなかった。
僕は布団を下げると、もう一度「薬」と短く鬼頭の耳元ではっきりと言った。
鬼頭は苦しみながらも、首を振る。
「や。薬……嫌い」
僕は唖然とした。
「嫌いったって、飲まなきゃ痛いままだよ」
「痛いままでいい……薬……ホントに嫌いなの」
今まで普通より大人びた子だとばかり思っていたけれど、まるで駄々っ子の子供のようだ。
初めて見せる一面に、彼女の中に可愛らしさを見た。
でもこのまま苦しみ続けるのは可哀想だ。
僕はペットボトルの水を口に含むと、錠剤を口に投げ込んだ。