TENDRE POISON ~優しい毒~
僕は鬼頭の体をそっと上向きにさせると、彼女の顔に近づいた。
苦しいのか、部屋は冷え切って寒いはずなのに汗の粒が額に浮かんでいた。
かわいそうに。
額の汗を手でそっと拭うと、僕は鬼頭の形の良い口を開かせた。
そのまま、薬を含んだ僕の口を近づけ、彼女に口移しした。
「ん……!」
短く声をあげ鬼頭の喉が薬を飲み込む。
それを確認して、僕は彼女の唇を指でそっと拭った。
「もう大丈夫だ。あと30分もしたら、薬が効きだしてくるはず」
僕は布団を鬼頭にかぶせると、ちょっと眉を寄せて彼女を見下ろした。
まだ苦しそうに顔を歪めてるが、もう手の施しようがない。
それに僕が近くにいたらぐっすり眠れないかもしれない。僕はそっと体を後退させた。
「待って……」
部屋を出ようとする僕を鬼頭が呼び止めた。
消え入りそうな小さな声だった。
僕が足を止める。
「……傍に……いて」