TENDRE POISON ~優しい毒~
僕はそっとベッドに近づいた。
鬼頭は不定期な呼吸で喘ぎながら僕を何とか見上げてる。
「傍にいて」もう一度、今度ははっきりと聞こえる声だった。
僕はベッドの端に腰を降ろした。
ベッドに手をつくと、その手に鬼頭の細い手が重なった。
汗を掻くぐらい暑い筈なのに、その手はひんやりと冷え切っていた。
僕はその細い指先を包むように握り返す。
「先生の手……あったかい」鬼頭は口の端で小さく微笑んだ。
「……うん。鬼頭の手は冷たいね」
鬼頭はふふっと小さく笑みを漏らすと、
「先生の手……安心する」
と小さく囁いた。
僕もだよ。僕も何故か君の手を握ってると安心するんだ。
そこには確かに命の息吹を感じられるから。
生きてるって確かな証を感じられるから。
鬼頭が寝返りを打とうとして小さくうめいた。
「痛いのか?」
僕は鬼頭の背中に手を回し、撫でさすった。
驚くほど華奢で頼りなげな小さな背中。
だけどスウェットの上からでも分かる程彼女の背中は熱を持っていた。
「ごめんね。こんなことしかできなくて」
そう呟いて、僕は彼女の背中を撫でた。