TENDRE POISON ~優しい毒~
三十分ほど立ってようやく鬼頭は落ち着いた。
安定した寝息が聞こえると、僕はほっと安堵して彼女の寝顔を見つめた。
初めて見る鬼頭の寝顔。
綺麗な寝顔だった。とても……
長い睫がすべすべした白い頬に影を落としている。
かさつきのない淡いピンク色をした唇がわずかに開いていて中から白い歯が覗いてた。
そこから浅く、深く吐息を漏らしている。
本当に綺麗な寝顔を僕は何となく見つめていると、
鬼頭は握った手を一瞬強く握り返した。
「せん…せ……」と短く呟く。
ドキリ…とした。一瞬起きてるのかと思ったが、鬼頭の目は開くことがなかった。
なんだ、寝言か……
どんな夢を見ているのだろう。
夢で僕を探しているのだろうか。
それだったらちょっと嬉しいな。
自然に顔がほころぶ。
彼女の夢の中にまで登場できたことを嬉しく思う。
と、同時に何故そう思うのか自分が分からなかった。
唐突に―――
そう、本当に唐突に僕は鬼頭の顔に自分の顔を近づけた。
自分が何をしているのか、頭ではちゃんと分かっていた。
でも気持ちは……
大切な生徒だぞ!
と警告している。
でも、止められなかった。
鬼頭の髪や首元からタンドゥルプアゾンが香る。
僕はその香りに包まれながら、彼女の唇にそっと自分の唇を重ね合わせた。