TENDRE POISON ~優しい毒~
『もしもし!』
急き込んだ様子の梶がすぐに電話口に出た。
『鬼頭!?お前っ大丈夫か??』
切羽詰まって緊張を帯びた声。僅かに語尾が震えてる。
「うん…大丈夫。心配かけてごめんね」
『それなら良かったぁ』言葉尻が妙に下がった。気が抜けた、って感じだ。
『ホントは俺も病院についていきたかったんだけど、授業があるからって先公どもに無理やりつれてかれてよぅ』
電話の向こうだから分かんないけど、きっと梶は唇を尖らせてる。
そんなことが容易に想像できた。
「ホントに心配かけてごめん。多少縫ったけど、傷跡は残らないって」
『そっかぁ。それなら良かった。で、お前今病院?』
あたしはケータイを一瞬強く握り締めた。
乾いた唇をちょっと舐めると、
「今は……家」と短く答えた。
『家?じゃぁ今からそっち行っていいか?無事な姿を見たい』
梶の気持ちは嬉しかった。
ホントに心配してくれてることが分かったから。
でもホントのことなんて言えない。
今は神代のマンションにいる―――なんて。