TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしが人を寄せ付けないって?
何で分かったんだろ。
神代は食器を重ね終えると、すっと立ち上がった。
無言で部屋の外に出て行く。トイレかな?と思ったけど、神代はビールの缶を抱えてすぐ戻ってきた。
「まだ飲むの?」
神代はあたしの隣に座った。ビールのプルトップを開けている。
「今日は飲みたい気分なんだ」
寂しそうに笑うと、一本タバコを口にくわえた。
神代がタバコを吸う姿をじっくり見るのは、これが初めてだ。
神代は100円ライターでタバコの先に火を灯した。赤い火種が出来て、タバコを口から離す。
ふぅとため息のような息を吐き出し、煙も一緒に吐き出された。
流れるような一連の動作を見て気付いた。彼はタバコを吸っていても様になる。
って、あたし何言ってるんだろう……
細い人差し指と中指でタバコを挟み込み、時折口に含む。
その動作をじっと見ていたら、
「あ、煙い?」と神代が聞いてきた。
「ううん。意外だなって思って。先生真面目そうなのに」
神代は喉の奥でふっと笑った。
笑い方があの保健医に、似ていた。