TENDRE POISON ~優しい毒~
「男の人の部屋ってもっと散らかってるもんでしょ?先生の部屋は綺麗だよ」
あたしはそう言ってベッドの端に腰を下ろす。
雑誌を片付けている神代はさっきから足取りが危ない。
無理もないか。相当飲んでたもんね。
なんて考えてるとふいに神代の体が傾いた。
「あぶなっ!」
声を上げたと同時に神代がドサリとあたしの上に被さってきた。
「った~、ちょっと先生!大丈夫?」
咄嗟に怪我したほうの腕や肩を庇ったから良かったものの、傷が開いたらどうしてくれるんのよ!
「ごめっ……!」
神代はすぐに体を退けようとしたけど、手がずるりとシーツの上を滑った。
神代の息を、鼓動を、体温を間近で感じる。
「別に……いいよ」
もっと……こうしていたい。
何でそう思ったのかな?
何でこうしようと思ったのかな?あたしは神代の細い腰に手を回して背中に手を這わせた。
「鬼頭!?」
神代が慌てる。声が引っくり返ってるよ。
「ホントだ。細マッチョ。引き締まった体してるね」あたしはクスクス笑った。
神代は大人しくされるがままだ。酔って身動きがとれないのだろうか。
神代の重みを感じる。柔軟剤の香りを体いっぱいに受ける。
それが何だか嬉しかった。
でも……
神代の背中は僅かに震えていた。