TENDRE POISON ~優しい毒~
「鬼頭!大丈夫か?」神代の声が遠くで聞こえる。
遠く、近く……まるでエコーがかかってるみたい。
神代はかがんで何か言うと、足早に行ってしまった。
待って!どこにも行かないで……
近くに……いて……
そんな願いが叶ったのかな?神代はすぐ戻ってきた。
「鬼頭、薬だ。飲みなさい」
薬!!冗談じゃない!あたしは薬が大嫌いなんだ。
飲むぐらいなら痛いのを我慢する。
神代は困ったように眉を寄せている。
ごめん先生…あたしにも苦手なものはあるんだ。
神代は何やらごそごそと身動きすると顔を近づけきた。
あたしを仰向けにさせると、
あたしの唇に唇を重ねた。
キス―――
かと思った……
ゴクン。あたしの喉を錠剤が通った。
……なんだ、薬だったんだね。
あたしちょっと期待しちゃったじゃん。
だめだ。あたし今痛みで変。
口移しだと分かってても……
ちょっと嬉しかったんだ。