TENDRE POISON ~優しい毒~
「ホンッとにごめん!!!」
その言葉をもう何度聞いたか。
あたしは「もういいですよ」とうんざりしながらトーストをかじった。
「僕低血圧なんだ……」
低血圧って言う範囲?別人だよ、あれは……
「他に何かしなかった?」神代が心配そうに向かい側からあたしを覗く。
「……別に……」
『雅』って名前で呼ばれたことは黙っておこう。
ドキンってした。だってあんなにはっきりと名前を呼ばれたの初めてなんだもん。
それに……ちょっと嬉しかった。
何言ってんだ、あたし。
あたしはそんな考えを吹き飛ばすようにトーストにかじりついた。
「鬼頭、今は傷痛まないか?」神代はコーヒーのマグカップを口につけて心配そうに眉を寄せた。
「今は大丈夫です」
「そっか。薬が効いてるんだな」神代はちょっと笑った。
薬……昨日、口移しで飲ませてくれたんだよね。
それを考えるとまともに神代の顔を見れない。
「今日は学校を休みなさい。僕は出勤だけど、まこが代わりに来てくれるから」
あたしは顔をあげた。
「えぇ?あの保健医がぁ?」