TENDRE POISON ~優しい毒~
あたしはまず明良兄に電話をかけた。
「あ、明良兄?」
『どうだ、そっちの守備は』
「上々だよ」あたしは喉の奥でちょっと笑った。
『怪我の具合は?』明良兄の声に心配の色がにじみ出ていた。
「今は、痛みもない。薬のおかげかな?」
『薬?お前薬嫌いじゃなかった?』
薬……
神代が飲ませてくれた。
あたしは唇をそっと指でなぞった。
「そんなことより、あたし今日一日学校休むことになったから。今のうちに神代の家を探ってみるよ」
『あんま無理すんなよ』
「うん。……あたしね、神代が一番傷つく方法見つけたんだ……」
『そっか。じゃあこんなこともう終わりだな』
明良兄の声にほっと安堵の色が混じった。
あたしはちょっと考えて、
「まだまだだよ。まだ足りない」
あたしの発言に明良兄がちょっと息を呑んだのが分かる。
明良兄はあたしがこんなことすることに反対してる。早く終わらせたいんだろうな。
だからあたしの計画を知ったら、明良兄は「絶対止めろ!」って反対するに決まってる。
でも……
「見つけたけど、あいつの好きな奴に近づくのは、まだやめないよ。あいつをとことんまで追い詰めてやるんだから」
まだ足りない。まだ傷つけ足りない。
あいつに死より辛い地獄を見せてやるんだから。