TENDRE POISON ~優しい毒~

あたしはこうまでして何で神代を目の仇にするのか。


乃亜姉のことがあるから?


ううん……それだけじゃない気がする。




だって神代は十分傷ついてる。


あの細い肩に罪の十字架を背負っている。




でも乃亜姉を傷つけて死に追いやったのは


紛れもない神代自身なんだから。




許すことなんてできない。





あたしは明良兄と通話を切って、ケータイを畳んだ。


どこから何を探ろう。


一番最初に目についたのが、テレビ台の隣に置いてあるチェストだ。


直線的なラインで、扉はガラス製。どこにでもあるチェストだ。


ガラスの扉の向こうには赤や黄色のミニカーが飾ってある。スポーツカーのようだ。


そう言えば寝室にも車の雑誌が転がってたっけね。




車、好きなんだね。


そう言えばあたし神代のことあんまり知らないや。



両開きの扉の下に小さな引き出しがある。


引き出しを開けると、小さな紙袋が無造作に放り込んであった。


薬の袋だった。大学病院の名前が入っている。



あたしは薬の袋から中身を取り出した。


銀色のパッケージに入った錠剤。



“ハルシオン”って書いてある。




ハルシオンって―――



睡眠薬だ。






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