TENDRE POISON ~優しい毒~
僕たちは職員室の角で唯一喫煙ブースになっている一角へ移動した。
今は喫煙ブースに僕らしかいない。
職員室自体も、部活動の顧問をやってる先生たちが多いせいか閑散としていた。
「白紙の答案用紙の問題は解決した?」
タバコを取り出しながら、まこは聞いた。
「ん。まだ……」
僕もジャケットの胸ポケットから一本取り出すと、口にくわえる。
「あんま考え込むなよ。お前の悪い癖だ」
まこはそう言ってタバコに火を灯した。
「分かってるけど……」
僕は乱暴にライターを押したが、火は着火しなかった。
2度3度とカチカチ押すが、炎は出てこない。
ライターまで、僕を拒んでいるように思えた。
「分かってないよ」
ふいにまこが口を開いた。少し苛々したような荒い口調だった。
そして、僕の顔をぐいと両側から挟みこむ。
そのまま顔を引き寄せられた。
僕の心臓が、どきりと派手な音を立てた。